「会社のために自分を犠牲にして出世する」といった働き方に、冷ややかな視線を送る若者が増えています。この変化は、単に若者の意欲が低下したわけではありません。出世のコストパフォーマンスが非常に悪くなっていると感じており、ある意味で合理的な判断を下しているとも言えます。
今回は、Z世代の若者が出世を望まない理由や人間関係の不安、接し方のコツ、そして今後のキャリアの方向性などについて詳しく解説します。
Z世代の新入社員や若者が出世を望まない理由
Z世代の新入社員や若者の間で、「出世したくない」と考えるケースは少なくありません。山梨中銀経営コンサルティングの『2026年度新入社員意識調査結果報告書』によると、新入社員の約35%が「役職につきたくない」と回答しています。
彼らが出世したくないと思う理由は、主に以下の4つが考えられます。
理由1.コスパ・タイパの重視
若者世代の多くは、「責任が増える割に給料が上がらないなら、平社員のままのほうがコスパが良い」といった、現実的で合理的な考え方をします。1つの会社で偉くなることよりも、複数のスキルを持ったり、いつでも転職できるフットワークの軽さを重視したりするケースが増えています。タイパを意識し、無駄な残業を避ける傾向も強いです。
理由2.責任やプレッシャーへの恐怖
「出世したくない」という本音の裏には、「責任だけが重くなり、失敗したら叩かれるリスクを背負いたくない」という自己防衛の心理があります。企業の不祥事やSNSでの炎上などをリアルタイムで目撃してきた世代だからこそ、目立つことや過度な責任を避ける傾向にあります。
理由3.ワークライフバランスの優先
出世するよりも、プライベートの趣味や家族・友人との時間を大切にしたいという価値観が浸透しています。職務範囲を明確に区切り、自分の私生活を守るために「ここから先はやりません」と境界線を引くことを好む傾向があります。
理由4.魅力的なロールモデルの不在
身近な上司や先輩が、長時間労働で疲弊している姿を見ていることも大きな要因です。「あんな風にはなりたくない」「管理職になっても辛そう」と感じてしまい、出世へのモチベーションが湧きにくくなっています。
Z世代の新入社員や若者の6割以上が抱える「人間関係の不安」
同調査によると、新入社員の6割以上が「人間関係の不安」を抱えていることがわかっています。その背景には、主に3つの不安があると推測されます。
不安1.ジェネレーションギャップ
学生時代は気の合う同世代との「横の関係」が主流ですが、社会人になると幅広い世代との「縦の関係」に放り込まれます。その結果、「価値観の違う上司や先輩とうまく話せるか」「飲みニケーションを強制されたらどうしよう」といった不安が生まれやすくなります。
不安2.対面コミュニケーションの経験不足
コロナ禍などの影響もあり、学生時代の授業やサークル活動をオンラインで過ごした若者も多くいます。適切な距離感がつかめないまま社会に出ることで、対面でのコミュニケーションの取り方が手探り状態になっている可能性があります。
不安3.ハラスメントへの警戒
先輩世代にとっては「ちょっとしたイジり」や「強めの指導」のつもりでも、若者にとっては「個人の尊厳を傷つけられた」と受け取られることがあります。コンプライアンス意識が高まっているため、パワハラやセクハラに対する警戒心は非常に強いと言えます。
出世したくないZ世代の新入社員や若者との接し方
こうした価値観を持つZ世代の新入社員や若者と信頼関係を築くためのコツを3つ紹介します。
コツ1.業務マニュアルを用意し、目的もセットで伝える
具体的な言葉で業務手順をまとめたマニュアルを用意し、指示の背景や目的まで丁寧に説明することが効果的です。「見て盗め」「空気で察しろ」といった昭和的なスタイルは、彼らにとって不親切で非効率なものと映ります。明確な正解がないまま「まずはやってみて」と言われると、失敗を恐れて動けなくなってしまうため注意が必要です。
コツ2.心理的安全性を担保する
「新入社員だから」「若手だから」という理由で意見を無視されたり、雑に扱われたりすることを非常に嫌がります。役職に関係なく、一人の人間として意見を聞いてもらえる環境をつくることで、心理的安全性(安心感)が高まります。意見が違っても、まずは「発言してくれてありがとう」「その視点は面白いね」と受け止める話し方がポイントです。
コツ3.こまめな1on1ミーティングを取り入れる
年に数回の人事評価だけでなく、定期的に1対1で対話する「1on1ミーティング」の機会を設けましょう。業務の進捗確認だけでなく、キャリアの悩みや日々の不安に耳を傾け、寄り添う姿勢を見せることで、お互いの信頼関係が深まります。
出世したくないZ世代の新入社員や若者のキャリアの方向性
管理職への昇進は、長いキャリアにおける選択肢の1つにすぎません。マネジメント業務を望まない場合、企業側も若者側も以下のようなルートを模索することが重要です。
方向性1.独自のポジションを築く「スペシャリスト」
ITスキルや語学、特定の資格・業務などの専門性を圧倒的に高める道です。「あの人に頼めば確実」という存在になれば、役職がなくても高い評価や裁量を得られます。企業側も、管理職とは異なる専門職向けの評価制度(スペシャリストコースなど)を整えることが求められます。
方向性2.リスクを分散する「マルチキャリア」
1つの会社に依存せず、複数の仕事や活動を同時並行で行う働き方です。会社員の安定した収入を基盤にしながら、副業で新しいビジネスに挑戦したり、スキルを磨いたりします。企業側が副業を解禁・推進することで、若者のモチベーション向上や社外でのスキル獲得につながるメリットもあります。
まとめ:Z世代の価値観を理解し、多様な働き方を支援しよう
Z世代の新入社員や若者が「出世したくない」と考える背景には、「リスクを回避して自分らしく生きたい」という現実的な生存戦略があります。上の世代から見ると「甘え」や「当事者意識の欠如」に映るかもしれませんが、責任や残業が増える割に給与が見合わないという厳しい現実があるのも事実です。
時代背景や労働環境が変われば、働く目的やモチベーションの源泉が変わるのは自然な流れです。若者の仕事に対する価値観の変化を受け入れ、多様な働き方やキャリアパスを用意することが、これからの企業に求められています。
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